バレンタイン狂詩曲
2月14日はバレンタイン・デイ。
戦技教導官をしていれば、憧れの的になる。
だから、紙袋を抱えての帰宅。
みんなの好意はうれしかったが、仕事以外のことで妙に疲れたような気がした。
帰宅時間はP.M.9:30をまわっている。
ヴィヴィオは起きてはいないだろう。
部屋のロックを外し、そっと家に入る。
ダウンライトに満ちた部屋。
キッチンの方だけ、明かりがついていた。
「アイナさん、遅くまでご苦労さまでした。」
そう声を掛けると、アイナはにこりと微笑んだ。
「そんな、なのはさんの方こそ、教導お疲れ様です。」
「遅くなってしまって、すみません。アイナさんも、そろそろ…。」
帰宅が遅くなる日は、アイナがヴィヴィオを見てくれていた。
しかし、さすがに時間外に遅くまで面倒を見てもらうのは気が引けるため、すぐにアイナと交代する。
玄関でアイナを送り出し、そのまま部屋着に着替える。
今日もフェイトは帰りが遅いのだろうか、そんなことを考えていたらなんとなく手持ち無沙汰で、紙袋の中身を広げた。
バサリと音がして、大量のチョコレートが姿を現す。
いくら甘いものが好きななのはでもこんなに大量は食べきれないし、かといってヴィヴィオにあげるには虫歯なんかの心配もある。
きっと、フェイトちゃんも大量にもらってくるんだろうな、とまた一つ憂鬱の種を思い出した。
「ふぅ…。フェイトちゃん、遅いなぁ…。」
時計は10時を回ろうとしていた。
と、聞きなれたシンプルなインターフォンの音。
恐らくフェイトだろう、なのはは小走りで玄関に向かった。
「なのは、ただいま。」
にこりと微笑む姿に、久しぶりに会えた喜びを隠し切れないなのは。
すぐにでも抱きつきたい衝動を抑えて、おかえりなさいの挨拶と、お疲れ様のねぎらいの言葉。
なのはの言葉に、フェイトもまた微笑を深くする。
と、なのはの視線がフェイトの手元に移った。
やはり、予想したとおりの紙袋。
なのはの視線に気づいて、苦笑いの表情になる。
「なんだか、毎年恒例になっちゃったみたい…。なのはは?」
「うん…、私も、かな。」
そう言ってなのはは視線で、広げたチョコレートの群れを指す。
「なのはの方もすごいね、ちょっと妬けちゃう、かな…?」
「うん…、私も。」
そう言って二人で微笑みあう。
どさり、とフェイトがチョコレートの入った紙袋と仕事の鞄を床に置くとなのはは、床に座り込んで、もらったチョコレートの物色を始めた。
色とりどりの包装紙できれいに包まれた中に、一つ、ピンク色の包装紙で入り口を結んだだけのシンプルなものがあった。
思わず、それを手に取る。
スルリと赤いリボンを解くと、中にトリュフが入っていた。
いかにも初心者が作ったような、形がいびつで、でも一生懸命作ったことを伺わせるチョコレート。
「あぁ、これ、あの子からだ…。手作り、なんてすごい、感心しちゃうかも…。」
あの子。
いつもなのはの厳しい教導に文句も言わず一生懸命な子。
笑顔が可愛い、あの子。
なのはは、思わず笑みがこぼれた。
しかし、ふとなのはがポツリと呟いた一言は、ほんの小さな破片となってフェイトの心に棘を刺す。
「なのは…、それ、食べるの…?」
「もちろんだよ?手作りしてくれたんだから、食べてきちんと感想伝えなきゃだよ?」
「そう、だよね…。」
そう言って、笑いながらも、制服のポケットをぎゅっと掴む。
そこには、なのはのために用意したチョコレート。
忙しい中にも時間を作って、自分で評判の店に買いに行った。
誰かに頼むことはしたくなかったから。
でも、それでも、自分が想うその人のために想いを込めて作ったものには、到底かなわない気がした。
でも、今から作ると言ってももう時間もないし、場所もない。
どうしよう、そう思った時に、ある人物の顔が思い浮かんだ。
「なのは!私、ちょっと用事思い出したから出かけてくる!すぐ戻るから!」
「ふぇ?フェイトちゃん、どこに――。」
どこにいくの?そう聞こうとしたときにはフェイトはすでにドアの向こうだった。
さすが金色の閃光。
速さだけなら誰にも負けない。
色々な意味で。
バレンタインもあとわずかで終わってしまう時間に、なのはは本日二回目のため息を吐いた。
ようやく目的の部屋の前までたどりついたころには、うっすら汗をかいてシャツが肌に張り付く感触。
八神、という表札を確認して、インターフォンを押す。
「はーい、誰やこんな遅くに?」
パタパタと廊下を走る音に次いで、すぐに八神一家の家長が姿を現した。
「はやて!ごめんこんな夜遅くに。」
ドアが開かれると同時に、一瞬でも惜しいと中に滑り込む。
「なんや、フェイトちゃんかー。こんな遅くにどうしたん?まぁ、ちょうど今日いるメンバーでお茶してたとこやから、フェイトちゃんもどうや?」
そう言って目で部屋の奥を指す。
ちょうどリビングでは、いつものメンバー、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラがテーブルを囲んでいた。
そして、そのテーブルの上には、立派なチョコレートケーキ。
「はやて、あれ…。」
「あぁ、今日バレンタインやろ?やからちょお早めに帰ってシャマルとヴィータとチョコレートケーキ作ったんよ――っ?」
はやての言葉が終わる前に、フェイトはがしりとはやての肩を掴んだ。
「な、なんー、フェイトちゃん?」
「はやて!私にもケーキの作り方、教えて!」
しっかりとはやてを掴んで、ギラギラと熱い視線で訴える幼馴染は、すこし怖かった。
「ええけど、今日はもう遅いし、またお互い時間取れたら、って!なんなん?」
そのはやての言葉にがくりと膝を落とし俯き、肩を震わせるフェイト。
「だめだ、だめなんだよ、今日じゃなきゃ…。今日じゃなきゃ意味がないんだ…。」
悔しそうに吐き出すその言葉。
つい、目の前にあったはやての部屋着の裾をぎゅっと掴む。
あまりの展開に着いて行けないはやてはしかし、ある人物の顔が浮かんだ。
「なんや、フェイトちゃん、なのはちゃんにチョコ、用意してなかったん?」
な、の、は、その単語にびくりと肩を震わせるフェイト。
「用意は、したんだ…。でも、なのは他の子から手作りのチョコもらってて…。」
ぽつり、ぽつり、と事の詳細を話し出すフェイト。
「なるほどな、手作りと既製品とでは、想いが負けた気がしたんやなー。
やけど、そんなん勝ち負けと違うし、なのはちゃんも忙しいフェイトちゃんのこと、わかってると思うよ?
なのはちゃんのことは、フェイトちゃんが一番よく知ってるやないの。」
はやての言葉は全く、正しいことで、こんなことでなのはの気持ちが変わるということは考えられないが、それではフェイトの気が済まなかった。
「うん…、でもやっぱり日ごろ言えない感謝も含めて形にしたいんだ…。今まで、なのはの存在にどれだけ助けられていたか、とか…。
改めてありがとう、これからもよろしくって、伝えたいんだ。」
ずっと俯いたままの幼馴染の顔は見えなかったが、その思いは少しわかる気がした。
八神一家も、日ごろは別々の任務に就いているため何かしらのイベントがなければ、改めてみんなで集まることがなくなってしまっていたから。
今思えば、一つの家で当たり前に食卓を共にしていた頃が少し懐かしい。
「まぁ、しょうがないなぁ、乗りかかった船や。時間もあんまないし、早速やろ?フェイトちゃん?」
「いいの?――っありがとう、はやて!」
ようやく顔を上げた幼馴染は本当にうれしそうな笑顔だった。
「うん、ええよ。やけど、裾はこれ以上引っ張らんといて。歩けへんし。」
先ほどからフェイトにすがるように裾を掴まれていたため、危うく下着が見えそうなほど部屋着がずれてしまっていた。
「あっ、ごめん!全然気づいてなかったよ…。」
まぁ、こんな慌ただしいバレンタインも、ええかな…?
と、部屋着のパンツを上げながら思う、とことん優しい八神家母であった。
「で、肝心の何を作るか、なんやけど…。先に言っておくけど、チョコケーキは無理やから。」
明らかに落胆したような表情のフェイト。
「あんなぁ、フェイトちゃん。ああいう見栄えもええやつはそれなりに大仕事で、時間もかなりかかるんよ。
12時まであと一時間ちょっと、どう考えても不可能や。」
「そっか、うん…、ごめん。」
「ライバルは、トリュフ、やった?ほんならかぶらん方がいいしなぁ。あれは初心者向けで早くできるんやけど…。
生チョコはかんたんやけど冷ますのに割りと時間かかるしなぁ。どうしたらええかなぁ…。」
腕を組み、悩むはやて。
フェイトは、そんなはやてを熱心に見守る。
「それなら、チョコマフィンはどうかしら?」
ちょうどキッチンにポットのお湯を足しに来たシャマルがアイデアを出す。
「チョコ、マフィン…。」
「ええなぁ、それ!グッドアイデアや、シャマル!」
「ええ、それなら私たちが作ったケーキと材料もほぼ一緒だし、焼き上がりも早いわ?」
「そやな、焼き立てのアツアツを食べてもらえば二人の仲も燃え上がるわ!どうや?フェイトちゃん?」
「うん!ありがとう、シャマル、はやて!」
「よっしゃー、そんなら早速とりかかろ!」
「うん、お願いします!」
盛り上がったところで、リビングのヴィータと目が合う。
――はやて、あたしは手伝わねーからな!
そう一方的に念話で話かけ、ぷいとそっぽを向く。
――ヴィータ、誰も手伝え、なんてゆーてへんよ?
笑いを噛み殺しながらはやてが返すと、がむしゃらにケーキを詰め込む姿が見えた。
ほんまは、気になって仕方ないくせになぁ、と呟くと、早速作業に入る。
そう決まってからは、早かった。
さすがに今までほどではないにせよ、普段から料理をしているはやては手際も良かったし、材料も全部揃っていたから、
混ぜて、焼くだけ。
オーブンに入れて焼いている間、フェイトはオーブンの前を何度も往復し、覗き込み、焼け具合を見ようとオーブンを開けようとして、
はやてに注意されたりと全く落ち着きがなかった。
そして、十数分後、あまいチョコの香りと共に、マフィンが焼きあがった。
オーブンを開け、いくつかあるうちの一つに、くしを指す。
すっと引き抜いて手の甲に当てると、はやては大きく頷いた。
「うん、ちゃんと火も通ってるみたいやし、完成や。」
「ありがとう、はやて!」
感激から頬を染めたフェイトがはやての手を握り締める。
「ええよ、それより、片付けとかやっておくから早く焼き立てをなのはちゃんに食べさせてあげな。」
「え…、でもわるいよ。急におしかけちゃって片付けも、なんて。」
思えば、急に深夜おしかけて無理を言ったのは自分だ。
さすがに申し訳なくなって、眉を寄せる。
「ええよ。水臭い。はよいき。」
そう言って、はやてはできたばかりのマフィンを桃色の紙袋に詰めて、フェイトの胸に押し付けた。
「はやて…、ありがとう!このお礼は必ず…っ!」
言い終わると、フェイトは颯爽と身を翻して玄関に向かう。
出掛けにくるりと振り返ると、片手を上げて感謝の意を表し、走っていった。
「お礼、なぁ。そんなら後でなのはちゃんの乳でも揉ませてもらおかなぁ…。」
玄関のドアが閉まると、ぼそりとはやてがつぶやいた。
「はやて。ライバルに塩送るよーなまねして、いいのかよー。」
振り返ると、ヴィータが不満そうに腕組みしながら立って、こちらを見ていた。
「ふふん、ヴィータはあまいなぁ?ええか?フェイトちゃんがなのはちゃんのために作ったチョコは、私が作ったと同じようなもんやん?
そしたら、なのはちゃんはフェイトちゃんのチョコを一番初めに食べると同時に、私のチョコも一番初めに食べるいうことや。」
「そっか!はやて、すげー、です!」
「さ、みんなでバレンタインのやり直しや!」
はやてとヴィータは、暖かな家族の待つリビングへと戻っていく。
八神家の夜はまだ更けない。
その頃、フェイトが部屋を出て行ってからそろそろ一時間が経とうとしていた。
「はぁ。フェイトちゃんどこ行ったのかな…。」
何度目かわからない呟きと、ため息。
仕事ならそう言うだろうし、鞄も置いたまま。
財布も持って行ってないということは、おそらく近所。
すぐに帰ってくるだろうと思っていたが、さすがに一時間も経つと心配になってきた。
「はぁ。お風呂、先に入ってようかな…。チョコも、食べちゃおうかな…。」
たくさんもらったチョコレート。
でも、一番初めに食べるのはフェイトのものにしようと決めていた。
特に本人に伝えたことはなかったが、今までも、そうしてた。
はぁ、と再びため息をついてベッドに身を投げる。
そして、床に置かれた紙袋。
中身はフェイトがもらってきたチョコレート。
「むぅ…。」
なんだか、急に自分がひどく不当な扱いを受けているように思えてきた。
人差し指をピンと立てる。
そして、チョコレートが入った紙袋へ、ゆっくりと指を向けた。
「でぃばいーん、ばすたー。………なんて、ね。」
なのはの指先から桃色の小さな光がふわふわと宙に浮き、紙袋の少し手前で弾けた。
一瞬、むしろスターライトブレイカーの方がよかったかな、と思ったり、そんな自分の子供じみた遊び
に頬を染め、帰ってこない恋人を恨んだ。
と、プシュっとエアーの抜けるような音と共にドアが開き、肩で息をした恋人が現れた。
「ごめん、なのは、お待たせ…。」
執務官の制服のまま、どこに行ってきたのか。
汗で、前髪が少し乱れていた。
「もー、フェイトちゃんどこ行ってたの?遅いよー。心配、したんだよ?」
ベッドから体を起こし、少しだけ、怒ってるんだよ?という意思表示で眉を寄せる。
「ご、ごめん、なのは…。お詫びに、これ…。」
と言って、フェイトから差し出されたのはあまいにおいのする桃色の紙袋。
受け取ると、まだ暖かかった。
湯気で紙袋が湿っている。
そっと開けると、チョコマフィンが四つ入っていた。
「フェイトちゃん、これ…。」
驚いて、ベッドサイドに立つ恋人を見上げる。
「う、うん…。ほら今日バレンタインだし、チョコレートだよ。日ごろの感謝と、――愛を、込めて。」
言い切ったフェイトの顔が染まる。
「フェイトちゃん!」
うれしさに、フェイトを抱きしめる。
なのははベッドに腰掛けて、フェイトは立っていたからちょうど腰に腕を周す形になった。
「今まで、これ作ってくれてたんだね?すごく、うれしいの…。」
腕に、力を込める。
マフィン作りのときについただろう、フェイトはあまいにおいがした。
「じゃ、早速、いただいてもいいかな?」
「うん、どうぞ…。」
紙袋の中からマフィンを一つ取り出すと、カップの紙をくるりと剥がす。
一緒に食べよ?とフェイトにも半分渡した。
なのはの隣に、フェイトも腰を降ろす。
「いただきます。」
律儀にそう言って、一口頬張った。
「どう…?」
自分はまだ口をつけず、こわごわ恋人の感想を聞く。
「うん、あまさ控えめで、とってもおいしいの!まだあったかいからチョコもとろっとしてるし。
んー、これ、真ん中に入ってるチョコが他のよりビターだね。大人の味、かな。」
「さ、さすがなのははお菓子屋さんの子だね…。」
マフィンの生地の配合や、分量は全てはやて任せにしていたため、笑顔が少しひきつるフェイト。
おそるおそる自分も一口頬張ると、本当になのはの言ったとおりで、改めてはやての腕に感心した。
「フェイトちゃん、マフィンごちそうさま。本当においしかったよ。
……でね、申し訳ないんだけど…その、実はわたし、チョコがないの…。」
一瞬、なのはが何を言ってるのか理解できなかった。
チョコが、ない…。
その部分だけ何度もリフレインしていた。
毎年、なのははチョコクッキーやトリュフを用意してくれていたし、時間が合えば二人で作ったりもした。
今までのバレンタインが走馬灯のように蘇る。
「本当に、ごめんね?」
申し訳なさそうに、目を伏せるなのは。
「う、うん…。大丈夫。そうだよね、なのは、教導とか、仕事、忙しいもんね…。」
うっすらと涙を浮かべて、明後日の方を見つめるフェイト。
「フェ、フェイト、ちゃん…?」
「うん、私は、大丈夫…。」
大丈夫、その言葉とは裏腹にがっくりと俯いてしまう。
「あ、うー、で、言い訳みたいでアレなんだけど、今年はチョコのかわりに、私、じゃだめかな…?」
「えっ?」
途端に、俯いた顔を上げる。
「なんて、ね?ちょっと苦しい、かな…?」
「そんなことないよ!すごくうれしい!」
勢いに押され、少し困ったようにフェイトを見つめるなのは。
そんななのはのしぐさが、フェイトの理性を焼き切る。
「なのは…、キス、してもいい?」
フェイトの問いは、なのはの答えを待たずに実行された。
トン、となのはの肩を押してベッドに倒すと、覆いかぶさり唇を重ねる。
始めはそっと触れ、次第に感触を確かめるように押し付けていく。
柔らかいなのはの唇を舌でそっとなぞると、なのはは咥内へ迎え入れてくれた。
舌を奥まで挿し入れて、全体でなのはの舌を擦ると、なのはがびくり、と震える。
反応がうれしくて、二度三度と同じように愛撫すると、少しだけ声が漏れた。
愛しい人の声。
深い口付けを堪能し体を起こすと、なのはを見つめる。
とろんとした瞳で荒い息をつく姿はとてもきれいで、まじまじと見てしまう。
「フェイト、ちゃん…?」
そんなフェイトに疑問の声を投げると、優しい、はにかみが返ってきた。
「なのは、チョコレートの味がする。あまい…。」
「フェイトちゃんも、だよ…?」
「もう一回、していい?」
「うん…。」
もう一度、なのはのあまい唇を味わう。
理性は、もう限界だった。
なのはに口付けながら、右手の手の甲でなのはの頬をなぞる。
少し、耳をくすぐると、身をよじって答える。
そんななのはがいとおしくて、耳から首筋へと指先を降ろした。
びくり、となのはの体が跳ねる。
そして、フェイトの手は、なのはの控えめな膨らみに到達した。
手の甲でさらりと膨らみを撫で、軽く握る。
そこに触れたら、指先からとろけてしまいそうな柔らかさ。
「なの、は…。」
唇を離し、声に想いを込める。
なのはの瞳は、柔らかな光を宿していた。
フェイトは、それを了解と受け取る。
「脱がすね?」
短くそう言うと、なのはの部屋着のボタンを外していく。
なのははフェイトの手元をじっと見つめ、肌が露になるのを待っていた。
ボタンが外れ、そこから自分の白い肌がのぞく。
恥ずかしいような、期待しているような、いつも、色々な感情がないまぜになった。
――フェイトちゃんは何を考えているのかな。
視線は、なのはの白い肌に刺さる。
ボタンを全て外し終え、シャツを肩から外すと外気に触れ、肌が粟立った。
いつも部屋から外出しない時はノーブラで、寒さから、きっと胸の先端も尖っているのが恥ずかしくて、少しだけ腕を胸の前に持ってくる。
視線をベッドのシーツに伏せている間に、フェイトも執務官の制服を脱ぎ去った。
後はきっちり着込んだ黒いタートル。
それも、あっさり脱ぎ捨てると、相変わらずの黒い下着。
フェイトは黒が好きだし、よく似合っていた。
白い肌と黒いレースのコントラスト。
ふと、視界にフェイトの紅い瞳が写った。
「なのは、胸、見せて…。」
そう言って、両手でなのはの腕を取ると、指を絡ませベッドに押し付ける。
ばんざいをした格好。
「なのは、もうここ、勃ってるよ?可愛い…。」
「やっ、寒いから、なの…。あんまり見ないでほしいな?恥ずかしいよ、フェイトちゃん…。」
頬を染め、顔を背けるなのは。
そんな仕草がフェイトにとってはいちいち可愛くて、もっと色々な表情を見たいと思う。
「恥ずかしい、だけ?」
そう言って、ゆっくりとフェイトの顔が近づき、膨らみを舐め上げた。
ダウンライトに照らされて、なのはの肌に唾液の痕がつく。
「んっ…。」
なのはがぎゅっと目を閉じ、肩をすくませる。
まだ敏感な先端には触れない。
フェイトは、そのまま感触を楽しむように、なのはの膨らみを何度もあま噛みをした。
「ん、やっ、フェイト、ちゃん…。噛んだらだめ、なの…。くすぐったいよ…?」
「だって、なのははチョコの替わりでしょ?だから、味わってるんだ…。」
そう言って、フェイトは膨らみの下の方に軽く噛み付いた。
ほんの少しだけ、歯を立てる。
少しだけ、チョコのない寂しさを込めて。
「あっ…んぅっ!」
なのはが、高い声をあげて体をびくりと震わせる。
「痛くても、感じちゃった?」
噛んだ部分を舐めながら、上目遣いになのはに問う。
「そんなんじゃ、ない、よ…。」
唇を結んだまま、潤んだ瞳で否定されても信じることはできない。
それに、さんざん周囲を愛撫しても、肝心の部分には触れていなかった。
そのもどかしさが、快感に拍車をかける。
「そう、なんだ…?」
少し首をかしげ、予告なしになのはの突起を噛んだ。
「やぁ!ぁああっ!」
一段となのはが高い声をあげ、腰が跳ねる。
痛くはしていないから、今度は先端を優しく往復する。
「フェイト、ちゃん、フェイトちゃん!あぁぁっ!」
なのははフェイトの頭をかき抱いて、縋る。
先端を口に含み、転がし、吸い上げる。
そのたび、まわされたなのはの腕に、力が篭った。
「んぁっ、ぁ、あぁーーっ!」
なのはは、しきりに声をあげ、背を反らせる。
フェイトは、体をなのはに密着させ、なのはの体の熱に、声に、酔う。
そして、右手をそっとなのはの足の間に移動させ太腿をなぞった。
そのまま、上に移動させ、行き止まりを軽く押す。
「やっ、フェイト、ちゃ…っ!」
びくり、と大きく腰を跳ねさせて、なのははシーツを掴む。
フェイトは胸から、やっと顔を上げた。
右手は、人差し指だけでなのはの大事な部分を往復する。
「なのは、そんなに声出したら、ヴィヴィオが起きちゃうよ…?」
そう、フェイトが言うとゆっくりと潤んだ瞳を向ける。
フェイトは左手の人差し指を立てると、その指を唇に当てる。
その意味を察したなのはは、右手を軽く握ると自らの口の前に持ってきて、漏れ出る声を塞き止めようとする。
もう片方の手は、湧き上がる快感を堪えるためシーツを握り締めた。
素直ななのはに柔らかく微笑むと、そのまま刺激を続ける。
ただ上下するだけの単純な反復。
しかし、なのはの体はすぐに反応を示した。
下着はうっすらと湿り、上下に動かすフェイトの指に、軽く膨らんだ突起が当たる。
指で、下着の上から突起をくすぐると、なのはの腰が跳ねた。
突起の周囲をなぞった後、指の先で先端をくすぐり、最後にぎゅっと押す。
それを何度か繰り返すと、なのはの手で制された。
「フェイトちゃん…、わ、たし、もうだめ…。それ以上されたら、おかしくなっちゃうよ…。」
愛しい人の、潤んだ瞳での哀願。
下着の色は、その部分だけ色が濃くなっていた。
それを見て、フェイトは目だけで微笑むと、なのはにもう一度軽くキスをした。
そのまま耳に囁く。
「なのは、もう我慢できなくなっちゃった…?いいよ?今までの分、いっぱいしてあげる…。」
次元航行部隊に所属するフェイトは、もちろん船に乗っている間なのはやヴィヴィオに会うことができない。
その間、二人は想いを募らせる。
フェイトは、なのはのショーツの両端に手を入れると、くるりと取り去ってしまった。
「私だけなんて、恥ずかしいよ?フェイトちゃんも、ね?」
そう言うと、なのはは上半身を起こし、フェイトに抱きつくような格好になると腕をまわし、ブラのホックを外す。
下までなのはに脱がせてもらうと、なんだか主導権が移動しそうで、自分で片手に引っ掛けると最後の一枚を取り去った。
肌と肌を密着させると、それだけでフェイトは達してしまいそうだった。
暖かく柔らかい、なのはの肌。
愛しい人との間を隔てるものは、何も、ない。
「なの、は。なのは…。」
初めて名前を呼んだときからずいぶん経つのに、その名前を口にするだけで胸が震えた。
抱きしめたまま囁き、体全体を押し付けると、じんわりと体を快感が走る。
ぞくぞくとした感覚が納まるとゆっくりと体を上げ、なのはの瞳を見つめる。
お互いの瞳に、頬を染めた自分が映り、くすりと笑い合う。
それを合図に、フェイトはだんだんと体を下げていった。
なのはの大腿に体を滑り込ませると、膝の裏に手を掛け、持ち上げる。
なのはの膝が、胸に当たる格好。
「やっ、フェイトちゃん!」
さすがに全てが見えてしまう格好は恥ずかしかったのか、なのはから抗議の声が上がる。
「なのは、いっぱい濡れてる…。久しぶりだから?それとも、恥ずかしいのが好きなの?」
なのはに顔を寄せ、息がかかるくらいの距離で問いかける。
「んんっ!フェイト、ちゃん、いじわるしないで…。」
息がかかったからか、見られていることを意識したからか、なのはの部分が収縮する。
「あはっ、なのはのここ、今動いたよ?やっぱり、見られると感じるのかな…。」
「ちが、うの…。あっ、も…、見ないで…。」
隠そうと、太腿を閉じようとしても、フェイトにがっちりと掴まれ、閉じることができない。
「だめだよ、なのは…。またしばらく会えなくなるかもしれないし、よく見ておかなきゃ。なのはの大事なところ…。」
フェイトの言葉が切れると、自分の秘部に視線が向けられているのを感じ、熱が篭る。
力を入れても、入れなくても、恥ずかしい反応をしてしまいそうで、余計に意識してしまう。
「あっ…んぅっ…、ん…ん…。」
触れられてもいないのに、視線を感じるだけで声が漏れてしまう。
もしかしたら、実際は見られていないのかもしれないのに、見られている、と感じた。
「なのはのここ、さっきからひくひくしてるし、お尻のほうまで垂れそうだよ?それに、なのはの可愛いのが顔を―――。」
「やっ!もう…、やなの…。」
涙声での愛しい人の抗議に、フェイトが顔を上げると、今にも雫が零れ落ちそうな青い瞳とぶつかる。
「な、なのは!ごめんね…。もういじわる、しないから…。」
慌てて謝罪するフェイトに、少し困ったような表情になるなのは。
「……ふつうに、しよ?」
さらり、と金色の髪を撫でると頬を染めた。
「ん…。」
怒らせてしまったわけではないことに安心して、今度こそ、唇を寄せる。
ちゅ、ちゅ、と周囲にキスをして、少し顔を出したなのはの桃色の突起を唇で包み込む。
そのまま軽く吸い舌でくるむと、それだけで、なのはの体が震えた。
なのはの反応を見ながら舌を這わせる速度を上げると、すぐだった。
「あっ、やぁ、フェイト、ちゃん!だめ、もうだめなの…!あっ!いっちゃ―――。」
なのはの体がガクガクと震え、太腿に力が篭り、絶頂を告げた。
絶頂で溢れた蜜を口に含みこくりと飲み干すと、すぐになのはを抱きしめた。
「なのは…、可愛い。」
そして再び秘部に指を這わせると、震えるそこに指を放った。
「―――っっ!!」
達して敏感になったそこへいきなりの刺激。
なのはは声すら上げられず、ただ、フェイトにしがみついた。
フェイトは、容赦なく、なのはの感じる部分をなぞる。
いったん、奥まで達してなのはを確認すると、軽く指を曲げ上のざらついた部分を擦ることに専念した。
「あーっ、ふぇ、いとちゃ――ぁあっ!だめ、おか、しくな、る…。」
なのはの体全体が激しく痙攣し、指をきつく締め付ける。
また、終わりが近づいているようだった。
いったばかりだというのに、体がばらばらになってしまいそうな快感が全身に広がり、息ができない。
なのはは、怖いくらいの快感に、意識まで呑みつくされてしまいそうだった。
ただ、確かなのは、傍にある優しい温度。
なのはは、必死にしがみつく。
と、フェイトの指が、いっそうきつく壁を押した。
「ぅあっ、また…、ああぁあんっ―――。」
なのはの意識がまた浚われると、愛おしさから、フェイトの唇が重ねらる。
口付けは、なのはの体から波が引くまで続いた。
昨夜は、久しぶりの逢瀬。
なのはを堪能したフェイトは上機嫌で仕事を片付けていた。
今日は本局での報告の仕事とデスクワーク。
自分の裁量で早く切り上げることができるから、今日こそ早く家に帰ってなのはやヴィヴィオと過ごしたかった。
夕暮れ時には、仕事の大半を切り上げ、残すは他の課との微調整。
明日やれることは、明日やる。
それが、生真面目なフェイトが仕事をし出してから学んだことの一つだ。
そうしないと、きりがない。
「よしっ。」
そう呟いて、コンソールを叩く。
シャーリーとティアナに今日はもう上がることと、二人も早めに切り上げるようにとメッセージを残し、書類を鞄に詰めると、
ロッカーに向かった。
暗証番号で、電子ロックを外すと、急ぎではない仕事の資料はしまっておこうとドアを開けた。
―――と、そこにはダークレッドの包装紙に包まれたプレゼント、らしきものが入っていた。
不審に思いながら手に取ると、小さな白いメッセージカード。
そっと開くと、見覚えのある字が飛び込んできた。
フェイトちゃん、一日遅れだけどハッピーバレンタイン!
14日にはたくさんチョコをもらうと思うから、15日に渡すね。寂しい思いさせちゃってたらごめんね?
愛をこめて。なのはより。
「愛を、こめて…。なのは…。」
そう呟いて、チョコを抱きしめる。
今胸の中にあるものが、とてもとても、大切でかけがえの無いもののように思えた。
この気持ちを、すぐに伝えたい。
そう思って、フェイトは愛車を制限速度ギリギリのスピードで走らせ、スイートホームへ向かうのだった。
<その後のお話>
バレンタインが終わってからしばらくして、はやてはなのはからの通信を受けた。
今日、もし時間が取れたら本局近くでお茶でも、という内容で、ちょうど午前の会議が一区切りつくところだったはやては、
お昼を取りながらなのはと会うことにした。
「なのはちゃん!今日はどないしたん?」
食堂に見慣れた青い制服を見つけ、声をかける。
「はやてちゃん、ごめんね忙しいところ呼び出しちゃって…。」
「ええよ、お互いさまや。それより、食べながら話そ?」
そう言って、食堂の列に並ぶ。
「ほんまはどっか外で食べたかったんやけど、なかなか時間とれなくて、食堂でごめんなぁ。」
「ううん、本局の食堂もおいしいから、私好きだよ?それにここの方が移動しなくて済むし。」
そんな会話をしながら、はやてとなのはの番がやってきた。
はやてはAランチ、なのははBランチを選ぶ。
ちなみに、Aはパスタ、Bはハンバーグ。
トレイを持ちながら、なるべく人の密集していない窓側へ席を確保した。
「いただきます。」
「はい、いただきます。」
そう声を掛け合って食事を始める。
「で、どないしたん?なのはちゃん。」
パスタをフォークで器用に巻き取りながら、はやてが尋ねる。
「うん、あのね、バレンタインの日、夜遅くにフェイトちゃんがお邪魔したでしょ?」
「……あー、来た、かなぁ?」
少し顔を引きつらせ、明後日のほうを向くはやて。
「いいよ、誤魔化さなくって。はやてちゃんちにご迷惑お掛けしたと思って一言謝りたくて。ごめんね?」
申し訳なさそうに首をかしげる可愛い幼馴染。
「ええよ、迷惑だなんて。久々にフェイトちゃんにも会えたしな。……けど、なんでわかったん?」
はやての問いに、にっこり笑うなのは。
「そんなの簡単だよ。はやてちゃんとヴィータちゃんにもらったフォンダンショコラ。フェイトちゃんにもらったマフィンの中のチョコと同じ味がしたの。」
「あぁー、そやね。確かに。ははは。」
乾いた笑いのはやて。
「フェイトちゃんのマフィンもはやてちゃんのフォンダンショコラも、すごくおいしかったの。来年は、私にも教えてほしいな。」
「もちろんやー、来年は夫婦そろって面倒見るよ?」
「そうだね、お願いしようかな?」
そう言って、くすくすと微笑みあう二人。
暖かな、二月のある一日。
ちなみに、フェイトのロッカーにチョコを入れたのは、14日になのは手作りのガトーショコラと引き換えに頼まれたティアナ。
電子ロックの暗証番号はなのはの誕生日だった。
FIN
あとがき
最後の方がぐだぐだですみませんorz
本当は、結末というかそれぞれのバレンタインまで書こうかと思っていたのですがそんなことやってるとまたオチもないのに
長くなってしまって、収集が付かないと思いそんな感じにさせてもらいました。
とりあえず、長かった。
もしかしたら、会長さまの生誕記念とかより長いかも。
まぁ、何を言いたいかというと、なのハーレム。
みんななのはのことが大好きなのですよ。
フェイなのですが、はやなのであり、なのヴィー(ヴィータ受けは仕様w)であり、なのティア(いじめられッ子は受け)なんです。
フェイトさん大変だー。
まぁ、私がなのはフィジカル受けが好きなのでフェイなのにしてみましたが、実際は全部、なのは様攻め、なのは様至上主義。
なのは様はみんなとちょっとちょっとうまくやっていけばいいよww
ちなみに、なのははみんなにちゃんとチョコをあげてます。
でも、全部一気に焼いたガトーショコラだったりw
みんなに同じものを上げるわけで、そのなかでヴィヴィオだけにはホットチョコがついたり。
そんな感じで。
楽しんでいただけたら幸いです~