ゆびきり





まだ日が高い放課後。
いつものように、みんなと一緒に下校。

真新しい制服はまだ糊がきいていてパリっとしていたし、新しい鞄はまだ角が擦れてもいない。
初めて買ってもらった携帯電話のメモリーも、なのは、アリサ、すずか、提督の四件だけ。
全てが新しいスタート。
フェイトがやっと本当の自分を始めてから、まだほんの少ししか時間は経っていなかった。

フェイトにとって、なのはのいる世界の全ては眩しくて、新しい。
何もかもがわからないことだらけだったから、毎日が不安と期待の連続で。
でも温もりを教えてくれて、まっすぐに向き合ってくれたなのはと一緒がうれしくって、毎日が楽しかった。
今日も少しだけ緊張した学校が終わり、楽しい放課後をなのはと一緒に過ごすはずだった。
しかし、フェイトはただならぬ緊張の中、必死にマンションへの帰路を思い出し続けていた。

あと少し、あと少し…。
あの道を曲がったら、なのはのおうちのご近所で、すぐにマンションに着くんだ。
だから、あと少しだけ――。


「――でね?って、ちょっとフェイト聞いてるの?」
アリサがフェイトの顔を覗き込む。
アリサは少しだけ眉を寄せ怪訝そうな表情で、フェイトは一瞬のうちに現実に戻る。
それは、先ほどから何回か繰り返された問いかけ。
でも、そのいずれもフェイトの答えは曖昧なもので、もともとはっきりした性格のアリサは苛立ちを隠せない。
「あ…、ごめん…。ちょっと考え事してて…。」
慌てて笑顔で取り繕っても、うまく誤魔化すことはできない。
「アリサちゃん。フェイトちゃん困ってるよ?…フェイトちゃん、もしかして体調が悪いとか?」
フェイトの右隣のすずかが、心配そうに見つめる。
「あ、ほんとだ。フェイトちゃん、あぶら汗かいてるよ?お腹、痛い?」
左隣のなのはにも顔を覗き込まれる。
「う、ううん。大丈夫…。ほんとにちょっと考え事してただけだから。アリサ、ごめんね?」
フェイトに申し訳なさそうに微笑まれ、アリサはそれ以上何も言えなくなってしまう。
「フェイト、本当に体調悪いんだったら早く言いなさいよ?先にフェイトのマンション寄って帰るから…。」
少し腑に落ちない表情でも、きちんとフェイトを気遣ってくれるアリサ。
自分を心配してくれるアリサやすずか、なのはに少し気が咎めながら、この楽しくも苦しいひと時が早く終わってくれますように、とフェイトは祈っていた。
そして、女の子同士のたわいもないおしゃべりが再開されると、再び窓の外の景色を眺めながら、自宅への道のりを必死に辿る。
アリサの執事である鮫島の丁寧な運転が、この時ばかりは仇となる。
フェイトが自宅であるマンションに到着するには、まだ少し時間がかかりそうだった。


――どうしよう…、もう限界…。早く、マンションに帰らなきゃ…。


下校する以前からフェイトの思考を奪っていたもの、それは、襲い来る排泄欲求。

授業が全て終わって、やっとホームルームの時間になる。
第97管理外世界でミッドとは違うカリキュラムと、習慣。
歴史の授業などはほとんどわからないことだらけで、緊張することが多かった。
そんな時間からやっと開放されて、フェイトは安心感と同時に下腹部に張りを感じた。
ホームルームは十数分で終わる、そう思い短い休み時間でトイレに行くのは後に回す。
しかし、外国からの転校生ということになっているフェイトは、転校後しばらく経っても押し寄せる生徒の波が引くことはなく、
今日も例に漏れず、ホームルームが終了すると同時にクラスメイトに囲まれ、たわいもない会話と質問。
学校、そして同い年の子供たちとの友人関係にまだ不慣れなフェイトが、自分一人の力で抜け出してトイレに行くことは到底難しかった。
そうして、戸惑っているうちにいつもアリサが助けてくれるが、今日は同時に手を引かれ、そのまま四人での下校となってしまう。

ぎゅっと握られたアリサの手を振り切ることはできなかったし、知り合ってまだ間もない初めての友人たちにトイレに行きたいとはなかなか言い出せなかった。

そうして、フェイトはバニングス家の車中で、襲い来る排泄欲求と戦わなければならなくなってしまった。
いつもなら気にもならない車の揺れが、今日だけは大きく感じる。
時折小石などを弾く小さな振動は、確実にフェイトの下腹部に刺激を与えた。
ゆったりと流れる景色を見つめながら、じんじんと痺れる排泄口。
一時間近く耐えている間に溜まった水分が、何度も何度もそこをノックする。
もし、なのはと二人で下校していたなら、気軽にコンビニなどでトイレを借りることができたかもしれない。
しかし、今は滑らかに走る車の中。
どうしてもトイレに行きたいから止めてほしいとは、ほとんど言葉を交わしたことのない鮫島がいることもあり、
やはり言い出すことはできなかった。
密室で、ただただひっ迫した尿意を耐えるだけの拷問に近い時間。
車から降ろしてもらえるには、あと10分程度。
フェイトには永遠のように長い時間だった。


そして、やっといつもの分岐点で、アリサとすずかに別れを告げる。
自動車と言う閉塞から開放され、ほっとした。
ここからは、フェイトとなのはの二人の時間。
しかし、フェイトはもはや歩くのも困難で、浅い息を吐いていた。
腿と腿をぴったりとくっつけ、少しでも塞き止めようと力を入れるが、時折襲ってくる大きな波にびくりびくりと体を震わせる。
今の状態で少しでも刺激が加わったら?想像しただけでも怖かった。
なのはの前での失禁――それは間違いなく新しく輝く世界の終焉。
もう、じんじんと痺れる小さな排泄口は感覚がなくなっていた。
「…フェイトちゃん、本当に大丈夫?顔色悪いよ?」
フェイトよりも半歩前を歩くなのはが、心配そうに見つめる。
明らかに、フェイトはいつもよりも歩みが遅い。
「うん、大丈夫だよ…。なのはは心配性だね?」
そう言って、無理に笑顔を作りなのはに追いつく。
「そうかな…?んと、じゃあ、フェイトちゃんが大丈夫だったら、なんだけど…。」
なのはは照れたように頬を掻きながら微笑み、言葉を続けた。
「あのね、この間のお休みの日に魔法の練習の後でうちの近くの空き地に行ったら、お母さんネコに連れられた子ネコがいたの。
すっごく可愛いんだよ?でね、それから何回かちょっとだけ餌をあげに行ってたら、少しだけ近寄ってきてくれるようになったの!
だから、フェイトちゃんにも見せたいなって思ったんだけど…。」
まだアリサちゃんとすずかちゃんには言ってないんだ…、そう続けるなのはに思わず、見たい、そう返事をしてしまった。
「なのはがそんなに言うなら、すごく可愛いんだろうね?私も見てみたいな…。」
「うん!じゃあ、こっちだよ?フェイトちゃんと二人だけの秘密だね!」
本当にうれしそうに笑い、フェイトの手を引き走り出すなのは。
なのはと、「二人だけの秘密」。
その甘い響きがフェイトの体を動かす。
もうとっくに限界は越えていた。



「おいで?ほら、怖くないよ?」
そう言ってなのはが手を伸ばすと、子ネコのうちの一匹がおずおずと寄って来て舌を伸ばす。
なのはとフェイトに警戒を怠らない親ネコだが、余程なのはを信用しているのだろう、体を車の下に伏せじっとしていた。
子ネコがちろちろとなのはの手を舐めると、うれしそうになのはが振り返る。
「ほら、ね?フェイトちゃんも。」
「う、うん…。」
そう言ってなのはがフェイトを呼ぶと、そっとそっと近づいていく。
もう少しで子ネコに手が届く、そんな時だった。
見知らぬ人間が急に我が子に近づいたためか、親猫が突然体を起こし、唸り声と共に牙を剥き激しく威嚇する。
「きゃっ!」
「――っ!」
前触れもないその行為に、二人とも驚き身を竦めた。

親ネコの突然の威嚇に、一瞬、フェイトの気が逸れた。
そのわずかな隙に、フェイトの排泄口を責める水流が、猛る。
一度緩んでしまうと、もう意思の力ではその勢いを止めることはできなかった。

なのはの背後からびちゃびちゃという水音。

不思議に思ってなのはが振り返ると、ちょうどフェイトの両足の間のコンクリートが、黒く染まっている。
一瞬、何が起きたのかわからずフェイトを見つめると、真っ青な顔で、がたがたと震えていた。
フェイトの履いたタイツが水気を吸って色が濃くなるのを見ると、やっと、なのはは理解した。
親友が、お漏らしをしてしまったことを。

顔が青ざめ、がたがたと震える親友は、そのまま同じ場所に立ち尽くしていた。
瞳は大きく見開き、顔からは血の気が引いていく。
フェイトの瞳は、虚しく宙を見つめ続けていた。
立ち尽くすフェイト、お漏らしをしてしまった親友を見つめるなのは。
コンクリートを打ち付ける水音は次第に止み、真新しい制服から水滴がぽたりぽたりと柔らかに落ちて行った。
フェイトは宙を見つめながら、長い間苦しめられていた排泄欲求からの開放感に惚ける。
しかし、次の瞬間にはそれがなのはの前であればこその羞恥を、一身に受けた。
驚きで見開かれた親友の目には、自分以外は映っていない。
このまま、息絶えてしまえばどれほど楽だろう。
しかし、人は羞恥では死ねない。
フェイトは、ただただ絶望の中で震えるしかできなかった。

子ネコたちは、いつのまにかいなくなっていた。


「あ…、あの、フェイトちゃん…。大丈夫?」
フェイトのお漏らしが納まってしばらくすると、おずおずとフェイトを見上げるなのは。
その瞳はまっすぐにフェイトを見つめていたが、瞳に宿る陰は、困惑。
なのはの声にびくりと条件反射で顔を向けると、視線が交差した。
親友の瞳に映る困惑から、今自分が何をして、どんな格好で親友の前に立っているのかが現実として突きつけられる。
なのは。
フェイトに世界をくれた特別な女の子。
まっすぐで強くて優しい、大好きな親友。
その子の前で自分はお漏らしをしてしまった。
小学三年生にもなっての、お漏らし。
そんな恥ずべき行為をやってのけた自分を、なのはは軽蔑するだろう。
いや、きっと呆れられ、嫌われる。
そう思った瞬間、震えは、足元からやってきた。
フェイトの膝ががくがくと震え、下半身からすっと力が抜ける。
気づいた時には自分が作り出した水溜りの中へ、腰を落していた。
「フェイトちゃん!」

なまえをよんで、ちかよってくる、なのは。
だめだよ、なのは…こっちにきたらなのはがよごれちゃう…。

自分の靴が水溜りに沈むのもかまわず走り寄り、フェイトの顔を心配そうに見つめる。
「あ…あ…、わ、たし…。」
呆然と言葉を紡ぐと、うん、と優しく微笑むなのは。
少しほっとして、恥ずかしくって、フェイトの瞳からは大きな雫がいくつも零れ落ちた。
「大丈夫、大丈夫だよ?フェイトちゃん。」
フェイトの瞳を覗き込み、困ったように微笑む。
「なの、は…。ご、ごめ…なさ…、ごめんなさ…いごめんなさいごめんなさい…。」
なのはまで汚してしまって、名前を呼んでしまって、フェイトはずっと謝り続ける。
なのはは、フェイトを落ち着かせるように優しく抱き寄せると、何度も髪を撫でた。
「謝っちゃだめだよ?誰も、怒ってないよ?ほら、立てる?」
フェイトの頭をひと撫ですると、腕を掴んでフェイトを引き上げる。
フェイトはなのはに支えられながら、なんとか下半身に力を入れるとよろよろと立ち上がった。
するとなのはは自分のポケットからハンカチを取り出し親友の涙を拭うと、ためらわずに下半身に手を寄せた。
「だ、だめ!なのはのハンカチ、汚れちゃうよ…。」
慌てて腰を引くが、大丈夫大丈夫、と言って溢れた水滴を拭っていく。
最後に、スカートについた土埃をぱんぱんと払うと、フェイトに手を差し出す。
「うちの方が近いから、ね?帰ろう、フェイトちゃん。」
こんな自分にまだ手を差し出してくれる、なのは。
でもなのはの手は、取れなくて。
なのははきれいだから、手を取りたくても取ることができない。
フェイトは胸の前でぎゅっと手を握ると、苦しそうに差し出された手を見つめた。
しかし、すぐにはなのはの手が、フェイトの手を掴む。
なのはは繋いだ手をぎゅっと握ると、にこり、と笑いかけた。
フェイトは手を引かれ、なのはの家までの道を辿る。
なのはの手は、暖かかった。



空き地から、なのはの家までは子供の足でも3分程度の距離。
すぐになのはの家の引き戸が見えてくる。

家の前まで来ると、ついフェイトは立ち止まってしまう。
急に進行方向とは逆に手を引かれ、不思議に思いなのはは振り返った。
フェイトは眉を寄せ、俯く。
フェイトも汚れてしまった格好のままでずっと外にいたいわけではない、その表情から読み取れるのは、不安。
「大丈夫だよ、フェイトちゃん。お父さんとお母さんはお店だし、お兄ちゃんは大学、お姉ちゃんはまだ学校だよ?だから、家には今誰もいないから…。ね?」
なのははそう言うと、フェイトの顔を覗き込む。
フェイトの顔は少しだけほっとしたように見えた。
ガラリ、引き戸を開けると再び手を引いて、家に入る。

「フェイトちゃん、タオル持ってくるからちょっと待っててね?」
なのはは玄関でフェイトを待たせると、洗面所へ向かう。
ずっと繋いでいた手から温もりが消え、フェイトは、なのはと繋いでいた手をじっと見つめた。
改めて一人になると、染み込んだ水分が冷え、濡れたスカートとタイツがぴたりと足に張り付く不快な感覚。
その感覚が、お漏らしをしてしまった時の様子を思い出させる。

不安、羞恥、絶望。
――そして、安堵。

急に一人になって、安堵をくれた温かい手が消えてしまって、フェイトはひどく不安になった。
このままなのはは帰って来ず、永遠に一人きりでいなければならないのではないかと思い、声には出さず胸の内でなのはを呼び続ける。

――なのはなのはなのはなのはっ…!!

怖くなって、目を閉じる。

しかし、すぐに温かな声が聞こえた。
「お待たせ、フェイトちゃん。」
ぎゅっと閉じた瞳を開けると、なのはがフェイトを見つめていた。
ほっと息を吐いたところで、なのはがフェイトに歩み寄り取ってきたバスタオルを広げると、フェイトの下半身を包み込む。
なのはの小さなハンカチでは拭いきれなかった水分を、拭き取るために。
「なのは、い、いいよ自分でやるから…。」
そう言って、フェイトがバスタオルを軽く引っ張っても、いいからと制され、なのはにされるがままになる。
まずは制服の上から軽く押さえて水気を吸い取ると、フェイトのスカートに手を入れ足を拭く。
フェイトの足元にしゃがみこんで黙々とタオルを這わせるなのはを見つめると、頬が熱くなった。
なのはが、自分が漏らしてしまったものをきれいにしてくれる。
それは、耐え切れない罪悪感と羞恥心と、そこに交じるほんの少しの喜び。
自分の感情が少し焦点がずれていると感じ、フェイトは頬を染める。
なのはから視線を逸らし俯くと、罪悪感を噛み締めるように唇を噛んだ。
「フェイト、ちゃん…。」
なのはに呼ばれ顔を上げると、心配そうな瞳とぶつかった。
頬を染め俯き、唇を噛む。
そんな親友は、自分を責め、悔いているようにしか見えない。
フェイトを安心させようと、にこり、微笑むと、立ち上がった。
「フェイトちゃん、そろそろお風呂沸くから、一緒に入ろう?」
なのはの急な申し出に、どきり、フェイトの心臓が跳ねた。
「で、でも、なのは…。」
魔法の練習をした時などはいつも一緒にお風呂に入っていたが、今フェイトは自身の排泄物に塗れている。
さすがに、一緒にお風呂に入るという行為は躊躇われた。
「いや、かな?」
フェイトを窺うように、上目遣いで見上げるなのは。
「だって、わたし…汚れてる、よ…?」
「なら、私が洗ってあげるね?」
フェイトをまっすぐに見つめると、微笑みかける。
なのはのきれいな笑顔は、再び溢れた雫で少しぼやけてしまった。


「じゃあ、フェイトちゃんは先に入ってて?私、着替えとか取ってくるから。あ、脱いだ服とかは篭に入れておいてほしいな?」
そう言って、なのはは洗面所のドアを後ろ手に閉めた。


今日もいつもと変わらない、楽しい放課後になるはずだった。
しかし、目の当たりにしたのは親友の排泄現場。
なのはは、純粋に、驚いた。
人間の生活に必要不可欠な行為でも、自分がしている姿をまじまじと見たことはなかったし、ましてや他人の排泄行為を見ることなど一切なかった。
だから、お漏らししているフェイトを見て、一瞬、何が起こっているのかわからなかった。
一番の親友は立ち尽くし、ただ、震えていた。
しかし、次の瞬間には、下校中の風景が瞬時に繋がる。
車の中で口数が少なく、あぶら汗を浮かべていたフェイト。
本当は、学校にいるときからずっと我慢していたのだろう。
でも、言い出せなかった。
きっと自分やアリサやすずか、クラスメイトに遠慮していたのだろう。
フェイトは、気持ちを言葉にして相手に伝えるのが少し苦手なところがあったから。
いつも、気持ちを押し込めて、我慢してしまう。
トイレくらい我慢することないのに、そう思っても、それが「フェイト」だった。
本当はアリサやすずかと別れてすぐにトイレに行きたかったはずなのに、空き地に誘ってしまった自分を、悔やむ。

洗面所のドアに背をもたれ少しだけ息を吐くと、下げた視線に小さな足跡が飛び込んでくる。
廊下に点々にとついた足跡は恐らくフェイトのもの。
靴下に染み込んだ排泄物が、フェイトの通った跡を浮かび上がらせる。
なのはは急いでタオルに水分を含ませると、もう一度玄関までの道を辿った。

一通り廊下を拭くと、二階の自室でフェイトと自分の着替えを取る。
体のサイズは大体同じだから、フェイトにはどれが似合うかなど考える余裕もなく手に取ると、すぐにお風呂場に向かう。
揺れる不安そうな瞳。
赤く染めた頬。
あまり、フェイトを待たせたくはなかった。

着替えを取りお風呂場に戻るとすでにフェイトは入浴中で、篭に入れられていた服を乾燥機の機能が付いた洗濯機の中に放り込む。
きっと、なのはとフェイトがお風呂から出る頃には洗濯が終わって、フェイトが帰る頃には全てが元通り。
少し湿った空気を吸い込み、一つ頷くと、手早く制服を脱いでドアに手を掛けた。


「フェイトちゃーん、入るよー?」
「う、うん…。」
なのはがガラリ、ドアを開けるとフェイトは少し後ろを振り返り恥ずかしそうに頷いた。
「あ、フェイトちゃん、私が洗ってあげるって言ったのにー。」
少しむくれる様に言うと、ちょうどドアを背にして体を洗っているフェイトから素早くスポンジを奪い取る。
「あ、なのは…。」
フェイトが追いかけるように手を伸ばすが、すでにスポンジはなのはの手の中。
「フェイトちゃんは、大人しくする。」
「…うん。」
なのはは手にしたスポンジを何度か揉みさらに泡立てると、フェイトの滑らかな背中に滑らせる。
なのはが着替えを取りに行っている間に、ほとんど洗い終わってしまっていたので、あとは背中だけ。
フェイトのちいさな背中は、すぐに泡だらけになる。
「じゃあ、流すね?」
そう言ってシャワーの蛇口を捻ると、すぐに適温のお湯が溢れ出す。
念のため手で温度を確認すると、背中から泡を流して行く。
温かなお湯がフェイトを包み込むと、ほっとして、なのはの温かさを感じているようで胸がじんとした。
またなのはを心配させてしまうかもしれないと思ったが、二つの瞳から溢れるものは止まらない。
嗚咽から、びくりと背中が大きく震えた。
「ほえ?フェイトちゃん、どうしたの?お湯、熱かった?背中、強く擦りすぎたのかな?」
フェイトが泣いていることに気づいたなのはは、おろおろとフェイトの様子を窺うが、俯いた顔から表情は読み取れない。
「なの、は…、ごめ…なさい…。ごめんなさい…、なのは…ごめんなさい…。」
なのはの優しさが、痛かった。
あんなことをした自分はもう、笑いかけられる資格も、優しくされる資格もないのに、なのははいつもと同じで強く、優しかった。
フェイトの気持ちを思いやり後始末までしてくれたし、今も、してくれている。
なのはに申し訳なくて、次から次へと涙が溢れた。
フェイトの背後で、がたん、と音がすると背中から温もりに包まれる。
廻されたなのはの両手が、フェイトを優しく抱きしめた。
足下には、なのはが落としたシャワーヘッド。
温かなお湯が床に広がっていく。
「フェイトちゃん、謝っちゃだめ。フェイトちゃんはなんにも悪いこと、してないよ?ちょっと、びっくりしたけど…。
――あ、でも、びっくりしたって言ってもちょっとだけだよ?うん、ちょっとだけ。」
「でも、なのはにあんなとこ見られる、なんて…。きっと、なのは、汚い子だと思ったよね…。」
フェイトはいくらなのはが優しくしてくれても、心のどこかでお漏らしをした自分を恥ずかしい子、みっともない子、ダメな子だと思っているのではないかと、不安だった。
「そんなことないよ!」
しかし、なのはからは即座に否定の言葉。
「フェイトちゃんは、汚くなんかないの。そんな風に言っちゃ、だめ。」
背後から廻された腕に力がこもる。
「…でも、わ、わたし…三年生にもなって…お、お漏らししちゃったんだよ…。なのはの前で…。」
いくら自分のした行為であっても、改めて口に出すのは抵抗がある。
フェイトの体が固くなり、頬が染まった。
「で、でも、緊急事態というか…、非常事態というか…。とにかく、フェイトちゃんはおかしくないし、汚くもないよ?」
だからこっちを向いて、となのはが優しく囁くと、やっとフェイトが振り返った。
涙に濡れ、頬を染めてなのはの様子を窺うように上目遣いで見つめる。
「なの、は…。」
「うん!」
フェイトにおずおずと呼ばれ、笑顔で頷いた。
しかし、次の瞬間にはその笑顔が凍りつく。
「なのは…、わたしのこと、おかしくないって言ってくれたよね?…なら、なのはも見せて?お漏らししてるとこ…。」
「ぅえええぇぇぇぇぇぇ?」
熱気と湿気がこもった風呂場に、なのはの悲鳴がこだまする。
「…だめ、かな?」
なのはの悲鳴を否定と受け取ったフェイトが眉を寄せ、悲しそうな顔をする。
やっと元に戻りかけたのに、フェイトの表情を見ると胸が痛んだ。
なんとかフェイトを悲しませない方向で、やんわりと断ろうとなのはは言葉を捜す。
「だめっていうか…、ほら、そう言われても急に出るものじゃないし、ね?」
「でっ、でもなのは、五時間目からトイレ行ってないよね…?」
フェイトに言われてみると、確かに五時間目からトイレに行っていない。
六時間目は体育だったから、終わった後にたくさん水分も取った。
なんだかそう言われると、急にトイレに行きたいような気分になってくる。
「う、ううん…。でも、やっぱり恥ずかしいよ…。」
お漏らしをしてしまうのと、する、のとは過失と故意とでかなり意味が異なる。
なのはは自分がお漏らしをするところを想像して、少し頬を染めた。
「わたしだって、すごく恥ずかしかったよ…。なのはの前で、おしっこ漏らしちゃうなんて…。」
なのはの言葉を聞いて、フェイトは再び自分の痴態を思い出したのか瞳を潤ませて視線を逸らす。

――あー、もう!なるようになれ、なの!

ふぅ、とひとつ息を吐くと、なのはは覚悟を決め、フェイトの瞳をまっすぐに見つめた。
「…わかったよ、フェイトちゃん。」
その一言に、フェイトの顔が輝く。
「ほんと?なのは?」
うれしさを隠し切れないフェイトは、はにかんでなのはを見つめる。
「うん…。」
そんなフェイトに、困ったように微笑む、なのは。
「じゃぁ、なのは。そこに立って?」
フェイトは視線ですぐ隣の壁を指す。
立って用を足すということをしたことがないなのはは、少し戸惑いながらもフェイトの言う通り壁を背にして立った。



「どう?なのは、出そう?」
下からフェイトが、期待の視線をなのはに向ける。
なのはは壁を背にして立ち、それを下から見上げるフェイト。
排泄しやすいように、となのはの足は少し開かれているから、見上げるフェイトからはなのはが全て見えてしまっているに違いない。
そう思うと、恥ずかしさから頬を染める。
「だって、そんなに見られてたら、しづらいの…。」
フェイトはなのはの言葉を聞くと、なのはの未だ誰にも踏み込まれたことのない場所にそっと手を伸ばし、触れた。
「おしっこの出るあなってこのあたりかな…?なのは、刺激したらしたくなるかな…?」
「えっ?フェイト、ちゃん!」
柔らかななのはの蕾にそっとそっと指を這わせると、優しく割り開いた。
なのはは、その刺激にびくりと体を震わせる。
フェイトは、なのはの蕾のあまりの柔らかさに驚き、きれいなピンク色の壁に見入っていた。
「なのはのここ、すごく可愛い。」
思わず、素直な感想が口をついて出る。
「フェイトちゃん!や、めて…?」
フェイトの指が優しく触れると、恥ずかしさと刺激で妙な感覚が湧き上がり、なのはは戸惑いを隠せない。
じわり、じわり、下腹部に熱が集まる。
「どう?なのは。したくなった?」
フェイトが刺激を続けながら、なのはの様子を窺うように見上げる。
顔を真っ赤にして、なのははこくこくと頷いた。
なのはの反応に満足して、さらに指を奥まで進めると、少し窪んで複雑に入り組んだ部分を見つける。
力を込めると、つるり、フェイトの指が少しだけ入ってしまった。
「―っ!いた、いよ…フェイトちゃん…。」
なのはが痛みから体を震わせると、その部分がフェイトの指をきゅっと締め付ける。
その反応に驚き、慌ててフェイトは手を引っ込めた。
「な、なのは、ごめんね…?これなら痛く、ない…?」
フェイトは躊躇わず口を寄せ、なのはの蕾をぺろりと舐めた。
「やっ!フェイトちゃん!そんなとこ舐めたら、きたないの…。」
なのははフェイトから離れようと腰を引くが、すぐに壁に当たってしまう。
「や、やなの…。」
「んっ…。なのはの体にきたないところなんてないよ?ちゃんとなのはがお漏らしできるまでするからね?」
にこりとフェイトが笑うと、再び顔を寄せる。
フェイトが舐めると腰を引き、なのはが逃げればフェイトが顔を寄せる。
そうして、ついになのはは逃げ場を失ってしまった。
「あっ、あぁ…。んん…。」
フェイトの柔らかな舌は、なのはのちいさな蕾を何度も何度も往復する。
どこが感じるかなどはわからず、ぺろぺろと舐めるだけだが、初めて訪れる感覚になのはは体を震わせた。
その度に、口からは今まで出したことのないような声が漏れ、むずむずとした感覚が大きくなる。
それは、排泄欲求とはまた違う感覚。
でも、決して不快ではなく、むしろもっとしてほしいとさえ思えた。
「やぁっ、フェイト、ちゃぁ…。おかしな声、でちゃうの…っ。」
上目遣いになのはを見ると、ぎゅっと目を閉じていやいやと首を振る。
「おかしくなんてないよ?なのはの声可愛いから、もっと聞きたいな…。」
そっと口を離してそう言うと、もっと深く顔を埋めた。
と、フェイトの鼻の頭に、こつんと何か固いものが当たる。
「んあっ!あぁぁ――。」
今までの中で一番大きななのはの声。
なのはの手が、フェイトの髪を掴む。
頭を引こうにも引けなくなってしまい、フェイトはそのまま奥を探るとぐりぐりと鼻でなのはの固くなった突起を刺激した。
すると、今まではフェイトの唾液だけでさらりとしていたのに、なのはの窪みからぬるぬるとした液体が出てくる。
それは、すっぱいような不思議な味で、窪みに舌を埋めるとさらにたくさん出てきた。

――これ、何かな?なのはのお漏らしが近いってことなのかな…?

そう思い、フェイトはなのはから溢れる液体を舌で拭い、その滑りを利用して窪みに侵入した。
またなのはが痛がると悲しいから、少しだけ入れて、掻き回す。
「フェイトちゃん、フェイトちゃん…っ。あ、へんなのぉ。お腹の中、じんじんするの…っ。」
なのはの声に、フェイトは自分の記憶と重ね合わせ、なのはの限界が近いことを悟る。
夢中になって、なのはの蕾を舐めると、なのはの声がいっそう大きくなった突起を思い出し、吸い付いた。
「ひぅっ!!」
敏感な突起を吸われ、なのはの中を鮮やかな光が駆け抜ける。
びくびくと大きく体を震わせるなのはの反応に満足し、さらにちゅうちゅうと突起を吸い上げると、なのはの腰が跳ねた。
「やっ!フェイトちゃ、フェイト、ちゃん…っ!あぁあぁっぁぁぁ――。」
なのはの一際高い声に驚いて顔を離すと、降り注ぐ金色の液体。
それはなのはの震えに合わせて、断続的にフェイトを濡らす。
温かいなのはの体温に包まれて、フェイトはうっとりと瞳を閉じた。



長かったお漏らしが終わると、惚けたような表情のなのはがずるずると壁にもたれてしゃがみこむ。
ぎゅっと目を閉じ頬を染め、浅い息を吐くなのは。
フェイト自身も、じんじんと下腹部がうずくのに気づくとそっと足の間に触れてみる。
そこは、なのはと同じようにぬるりとした液体が溢れ、フェイトの頭の奥で小さな火花が散った。
その刺激に驚いて手を引っ込めると、じっと手を見つめる。
ぽたり、ぽたりとフェイトの金色の髪から同じ色の液体が流れ落ち、頬を伝って床に落ちた。
フェイトは、一つ雫を拭うとそのまま口に含む。
しょっぱいような、不思議な味。
しかし、なのはの体に溜まっていたものだと思うとなぜだか甘く感じる。
一人フェイトは微笑むと、ぐったりとしたなのはに声をかけた。
「なのは、大丈夫?」
なのははフェイトの声に薄く瞳を開け、姿を確認すると、驚きで目を見開く。
次第になのはの瞳が潤み、目じりに大きな涙の粒ができると弾けるように泣き出した。
「ふぇぇ、フェイトちゃんにおしっこかけちゃったの…うぇぇ、ごめんね、ごめんね…っ!」
「な、なのはは悪くないよ?わたしが勝手にしたことだし、悪いのはわたしだよ!なのは、泣かないで…?」
ちいさく肩を震わせ涙を流す親友を見ると、フェイトも悲しくなった。
「なのは、わたしは大丈夫だから…。だから、そんなに泣かないで…。」
そう言って、フェイトはなのはに顔を寄せ、唇で涙を拭った。
左右両方のなのはの瞳に口付けると、最後、唇に一つキスを落とす。
「―――っっ!」
突然訪れた柔らかい感触に驚いて、なのはが顔を上げる。
「よかった。やっと、泣き止んでくれた…。」
いきなりのフェイトの口付けに、涙は引っ込んでしまった。
なのはは、唇を押さえて頬を染める。
「なのはが泣いていると、わたしも悲しくなっちゃうんだ…。」
そう言って、フェイトは困ったように微笑むと、なのはの頬を撫でる。
「…なのは、お風呂に入ろう?」
こくり、なのはは頷いた。



体を洗って湯船に入ると、なんだか気恥ずかしくなって、二人とも視線を合わせない。
今思えば、かなり際どい行為。
「フェイトちゃん。」
「なのは。」
同時に声を発すると、視線がぶつかり二人とも頬を染める。
「フェイトちゃんから、どうぞ…。」
「ううん、なのはからどうぞ…。」
お互い譲合うのがなんだかおかしくって、二人で微笑み合う。
「今日のこと、二人だけの秘密だね?」
フェイトの言葉に、なのはが照れたように頷く。
「でも、フェイトちゃんは私ともう一回約束なの!遠慮しないで、ちゃんと、思ったことは言葉にする。…ね?」
「う、うん…。約束…。」
フェイトが頷くと、二人で指を絡め、約束の印。




きっとお風呂から出たら、フェイトの服は乾いていて、そうしたら二人で楽しくおしゃべり。
飲み物はフェイトの好きなココアを入れてあげよう。
今日も楽しい二人の放課後―――。